セリエA復権の最後の鍵とも言えるクラブはファンションの街、ミラノに砦を構える。ご存知ACミランである。かつて数多くのタイトルを保持し、世界最強のクラブはどこかと論ずれば必ず名の上がった名門は、今や欧州トップの舞台に立つこと自体が難しいという苦難の時期を過ごしている。
一時は2桁順位にまで沈んだrossonero(イタリア語で赤と黒の意)だったが、かつてチームを牽引する選手の一人として世界最強の座を掴み取った闘将ガットゥーゾが昨季中盤より監督として戻ってくると、少しずつかつてのメンタリティを取り戻してきている。戦術的に見れば賛否両論あることは否めないが、ミランがこれを契機にスクデット争いへと戻ってこられたら、きっとセリエAはまた世界最高と呼ばれるリーグの一つになるだろう。
今回はそんなミランを含む4チームをお届けする。注目の若手監督率いる"ミランキラー"もここで登場...?!
エンポリ
昨季セリエBを圧倒的な強さで制しただけに期待は小さくない。リーグ戦88得点を叩き出した攻撃陣がセリエAの舞台で通用すれば、目標とする残留も視野に入ってくるだろう。セリエAを何度も経験した選手が数多く在籍しているため、彼らのパフォーマンスが重要なキーとなるか。昇格組研究所で取り上げたカプートにも注目だ。(Dino)
Yotaro:
昇格組とは思えない高い攻撃意識などはB時代から踏襲されていて、継続性は二重丸ですよね。
ラツィオタロー:
ウチと当たった時もカウンターが何度か脅威になってました。
Dino:
闇雲に前線に放り込んだりしないところにこだわりを感じます。左SBのアントネッリの働きが際立ってますね。
kyazu:
エースのカプートが好調ですね。ベテランらしい嗅覚で得点できる選手がいるのは残留争いの中でも大きなストロングポイントだと思います。
ミラン
念願だったシーズン20得点以上が計算できるストライカー、イグアインの加入はチームに追い風となるだろう。スソやチャルハノールら実力者に加え、下部組織出身のクトローネやセリエA初挑戦となるカスティジェホなど国内でも屈指のアタッカーが揃う。懸念すべきは最終ラインの安定感。ロマニョーリとムサッキオが踏ん張ってはいるものの、失点の多さが目立つ。新加入のカルダーラは怪我で出遅れている状態だ。昨季主将を務めたボヌッチの穴は大きいか。 (Ryosuke)
Dino:
シーズン通しての安定感は望み薄ですが、攻撃陣の迫力ならリーグ屈指なのは間違いないと思います。
kyazu:
そろそろ守備が不安ですね。14節終了の現時点でリーグでのクリーンシートが僅か1は心配です。
ラツィオタロー:
昨季のFWがイグアインに代わったことで攻撃力が目に見えて上がってますね。スソもかなり調子よさそうです。ただ、守備はなんだかんだボヌッチの穴が大きいように思われます。
Yotaro:
雑感ですが、ここはチャルハノールとビリアが好悪両面で柱だなぁと思います。
キエーヴォ
ゴッビら昨季主力級のベテラン陣を一掃、"おっさん軍団"は若返りへと舵を切った。だが粉飾決算が発覚した影響で補強は難航、さらにはペナルティとして勝ち点マイナス3からのスタートとなり、結果として二度の監督交代を経た上で今季未勝利と大苦戦中だ。守護神ソレンティーノは未だ健在、またデパオリやキイネといった期待の若手も出てきている。キエーヴォの指揮は三回目となるディ・カルロのもと強固な守備組織を再構築し、「奇跡」の残留を果たしたい。(Yotaro)
Ryosuke:
開幕戦で戦った身としては非常に厄介な相手でした。ジャッケリーニも相変わらずのキレの良さですね。
ラツィオタロー:
ソレンティーノは流石ですが、一人で守り切れるほど易しくないのがサッカーですね...。攻撃陣ではステピンスキの奮起が必要だと思います。
Dino:
ジャッケリーニらを中心としたカウンターは切れ味鋭いです。
kyazu:
監督解任が残念です。守備陣が一気に変わったのも影響しているのかもしれません。ダンナは少し気の毒ですね...。
サッスオーロ
「イタリアのグアルディオラ」ことロベルト・デ・ゼルビ監督が率いる攻撃的なチーム。同監督は昨季率いたベネヴェントを残留に導くことはできなかったものの、ベラルディやボアテングといったタレント揃いのサッスオーロではここまで順調だ。2013年に初昇格を果たして以来幾度も上位陣を苦しめてきたのサッスオーロの積極的なサッカーは、セリエAに新しい風を吹かせている。彼らが欧州の舞台に立つことができるか注目だ。(ラツィオタロー)
kyazu:
元ヴィオラのババカルが一皮剥けそうで期待してます。今季最も番狂わせを起こすチームになるかもしれません。
Yotaro:
前から圧力がすざまじくて、1度こじ開けられると止められない感じがして怖い存在ですよね。
Dino:
攻撃陣だけでなく、ダンカンやロカテッリ擁する中盤も魅力的です。EL争いに絡んできても不思議ではないかなと。
Ryosuke:
最終ラインのマーロンもビルドアップの起点として効いてますし、楽しみなチームです!
おわりに
開幕から続くキエーヴォの不振で残留争いは例年に増して読めなくなってきている。セリエBで現在2位につけているエラス・ヴェローナがこのまま上がってきたら、キエーヴォが降格するわけにはいかないだろう。ヴェローナ・ダービーはAの舞台でこそ意味がある。
そして現在勝ち点がほぼ横並び状態の4位以下もこの先の展開は全く読めない。しかし、CL最後の一枠を勝ち取る有力候補としてラツィオとミラン、ローマの名は上がってくるはずだ。実力は折り紙付きのストライカーを擁する3チームを率いるのは、まだ経験の浅い若手監督である。より多くのアイデアを持つ者が最後に笑うことになるだろう。
最終回となる次回はいよいよ絶対王者の登場だ。最終回までに登場したチームもおさらいした上で、是非ご一読いただければと思う。
企画担当記者一覧
ラツィオタロー Lazio Japan (@lazio_jp) 個人ブログ『やや日刊ラツィオ』
Dino:FVCG (@dino_1906) 個人ブログ『トーロクロニクル』
kyazu (@serientina) 個人ブログ『アルノ川の畔から』
Yotaro:Giappone Clivense (@Chievo_Giappone) 個人ブログ『365gialloblu』
Ryosuke (@forthejuve8) 個人ブログ『Fino Alla Fine diary』