7月が目の前に迫り、セリエA各クラブは来季に向けた動きを活発にさせていく時期に突入する。スクデットを狙う者たち、欧州カップ戦出場を狙う者たち、そして残留を目指す者たち。それぞれ来季に向けた思いは様々だ。
この時期はイタリア各紙や名の知れた記者たちが、各クラブの移籍情報をTwitterや新聞に書き殴る。ひたすら書き殴る。一部の信憑性の高い媒体を除き、その大半は当てずっぽうなものかもしれない。数打ちゃ当たる戦法を使った、いわゆる"飛ばし記事"というやつも中には存在する。しかし、この当てずっぽうな記事たちも眺めるだけで意外と楽しかったりするもの。「◯◯来んの!?うおお!!」と獲得の噂に上がる選手の話題で、サポーターたちも来月からはより一層の盛り上がりを見せていくことだろう。
さて今回は、メルカートダンシング(?)に溺れたいアナタのために、移籍の話題でよく使われるイタリア語をいくつか紹介しよう!というものだ。新シーズン開幕までの長く辛い時間(個人差があります)も、イタリア語の勉強だと思えば情報に踊らされるのも悪くないかも...?
早速だが、皆さんご存知Skyの名物記者ジャンルーカ・ディ・マルツィオ氏のツイートを題材に、いくつかの表現を見てみよう。
正式決定・取引完了!
Calciomercato | La Sampdoria ha ufficializzato l'acquisto di Depaoli
訳) サンプドリアはデパオリの獲得を正式発表した
・ha ufficializzatoで「正式なものにする」の意味を持つ動詞ufficializzareの三人称過去形を作れる。ニュース記事ではクラブが公式発表を出した時に使われることが多い。
・名詞acquistoは「購入」の意味。要するに選手を「購入」したわけだから獲得したということだ。動詞acquistareを用いて「獲得した」と表現する場合もある。上の文章で言えば、Ufficiale : La Sampdoria ha acquistato Depaoli 「公式 : サンプドリアがデパオリを獲得した」という感じ。
Calciomercato | Inter, nei prossimi giorni la firma di Sensi
訳) 今後数日でセンシはインテルとの契約にサインする
・ここでは名詞firmaが使用されているが、「サインする」の意味を持つ動詞firmareも覚えておいて損はない。ちなみにサイン前に行われるメディカルチェックはle visite mediche。その後ろにin corsoが付けば「進行中」ということだ。
・また、「裏付けが取れた」を意味するconfermatoや「取引完了」を意味するfattaといった単語が目に入った場合、それは獲得が秒読み段階ということだ。おめでとう。
獲得が近い!
Genoa vicino a Cristian Zapata
訳) ジェノアはクリスティアン・サパタ獲得に近づいている
・vicinoは「近い」の意味。近ければ近いほどvicino→più vicinoもしくはmolto vicino→vicinissimoという風に変化する。
・「〜へ」の意味を持つversoという単語も一緒に覚えよう。例えば上のサパタの例文に続けるなら、Il difensore del Milan verso il Genoa「ミランのDFはジェノア移籍へ」のような感じ。
現在交渉中
Continua la trattativa Bologna-Genoa per Kouamé
訳) ボローニャとジェノアはクアメに関する交渉を継続している
・動詞continuareは「続ける」の意味。
・名詞trattativaは「交渉」。複数の交渉を同時に言及する時はtrattativeとなる。
Calciomercato - Bologna, tentativo per Defrel
訳) ボローニャがデフレル獲得に挑戦
・メルカート用語におけるtentativoは「オファーを出した」もしくは「問い合わせた」と捉えてもいい。要するに獲得への動きを見せているということ。
Calciomercato | La Roma incontrerà lunedì l'agente di Veretout, obiettivo numero uno di Fonseca e Petrachi. Il Milan rimane in standby
訳) ローマは月曜日、フォンセカとペトラーキらの1番のターゲットであるヴェレトゥの代理人と会談する。ミランも動向を注視
・incontreràは「会う」の動詞incontrareの三人称未来形。イタリア語は主語や時制などによって動詞がカメレオンのように何通りも変化するが、動詞の未来形は必ず最後のアルファベットの上に「`」が付くのでこれに関しては見分けやすい。
・agenteは「代理人」。agente di ◯◯で「◯◯の代理人」となる。
・obiettivoは「目標」の意味。今シーズンの「目標」という意味でも使われるし、獲得「ターゲット」という意味でも使われる。
・rimane in standbyは直訳すると「スタンバイ状態を保つ」となる。rimaneは「残る」の意味を持つrimanereの三人称現在形だ。選手がクラブに「残留する」という時も使われるのでぜひ覚えておこう。三人称未来形は不規則動詞rimarrà。例えば、Ronaldo rimarrà alla Juventusだと「ロナウドはユヴェントスに残るだろう」となる。
買取オプションや買い戻しオプション
Calciomercato - Spal, riscattato Bonifazi dal Torino. Si valuta il controriscatto
訳) SPALはボニファーツィの買取オプションを行使した。トリノは買い戻しオプションの行使を検討中
・動詞riscattareは本来「取り戻す」や「買い返す」という意味だが、メルカートでは「買取オプションの行使」を意味する。名詞形はriscatto。
・イタリア語でcontroは主に「反対の」といった意味を持つため、controriscattoで「買い戻し」となる。
prestitoすなわち「ローン移籍」に付随する各オプションについては下記に記しておく。
- prestito con diritto di riscatto 「買取オプション(権利)付ローン」
- prestito con diritto di riscatto e controriscatto 「買取オプション・買い戻しオプション付ローン」
- prestito con obbligo di riscatto 「買取義務付ローン」
- prestito secco 「ドライローン(オプションなし)」
いかがだっただろうか?今回はディ・マルツィオ氏のツイートの見出し部分にのみフォーカスを当てたため、文中に動詞がなかったりする例もあり細かい文法などには触れなかったが、ご存知の通り言語の世界は壁のない宇宙のようなもの。全てを網羅することなど不可能である。しかしここまで読んでくれたそこのアナタにとって、この記事が「イタリア語勉強してみるか」と少しでも思ってくれるキッカケになれば筆者としても幸いだ。
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