19-20シーズンも後半戦を迎え、盛り上がりは一層増してきた。
ユヴェントスの独走かつCL4チームがほぼ内定状態だったこれまでと違い、今季のセリエは結果がとにかく読めない。DAZN解説でお馴染みの細江克弥氏は、メディアで度々今季のセリエを「過去一番の面白さ」だと主張する。この「面白さ」が「順位表を見る」ことを指すのであれば、わざわざ記事にする必要はないだろう。しかし、筆者はこう思う。今季のセリエは、「試合を観る」のがとても面白い。
さて、では今季のセリエの試合は何が面白いのだろうか。答えの一つは、上位陣というより寧ろプロビンチャにある。
プレミアリーグから有名選手を派手に補強したインテルや注目の若手CBデ・リフトを引き抜いたユヴェントス、得点王真っしぐらのインモービレが牽引するラツィオらも勿論面白い。しかし、彼らを以ってしても苦戦を強いられるプロビンチャのクオリティこそ、過去一番なのである。
今回はそんなセリエを盛り上げる曲者たちを4チームと、それぞれの注目選手を紹介する。是非、後半戦チェックしていただきたい。
1.カリアリ
前半戦、目覚ましい躍動を果たしたカリアリを紹介しないわけにはいかない。ローマやインテルでの冒険を経て帰還したラジャ・ナインゴランを中心に、守備を得意とするロランド・マラン監督のもとで高いインテンシティを誇るチームを作り上げている。スタイルは非常に攻撃的で、第12節フィオレンティーナ戦では実に5得点もの大量得点を沈めた。後半戦は失速気味だが、同格相手にどこまで堪えられるかが最終順位を決める鍵になるだろう。
【注目選手】
ジョアン・ペドロ
今季ここまでで14得点と絶好調。ワンチャンスをものにする決定力と長距離カウンター時に活きる走力が魅力。得点に絡むためのポジショニングが良く、最後に押し込めるシメオネとのコンビも板についてきた。
2.ボローニャ
日本人DF冨安健洋の在籍するクラブ。両サイドにCBもこなせる冨安とデンスウィルを置いた可変式4-2-3-1を使って戦う。プロビンチャの中では比較的攻守にバランスの取れたチームであり、オルソリーニとサンソーネのサイドからの切り込みを武器に崩しにかかる。戦績もまずまず安定しており、連敗はそれほど長く続かない。直近ではアウェーでのローマ戦を含む3連勝を達成しており、次節ジェノア戦でさらにその記録更新を狙う。
【注目選手】
冨安健洋
今季セリエAでのNo.1右サイドバックと言っていい出来で、チームの戦術的な核である。速さを活かした攻撃も冷静な守備対応と判断の良さ、試合毎のムラの無さもセリエ1年目の若手とは思えないクオリティである。
3.パルマ
破産を経て昨季A復帰を果たした。スタイルは分かりやすい堅守速攻型。ユヴェントス移籍が決まっているクルゼフスキを筆頭に、横に短く縦に速くが徹底されている。分かっているのに止められないのはクオリティの証。ポジディブトランジション時の迫力はセリエA随一である。
【注目選手】
クツカ
ミドルレンジからの鋭いシュートが魅力のMF。イングレーゼとコーネリウスという実力ある2人のFWとも相性が良く、クロスもフィニッシュも出来ることから、チームのファイナルサードでの攻撃の厚みを増している。速攻のスイッチを入れられるインサイドハーフ。
4.エラス・ヴェローナ
昨季王者ユヴェントスから勝ち点3を奪ってみせた昇格組。敵に無理に合わせず、中盤できちんと組み立てて攻めるサッカーがAでも問題なく機能している。若手が多いにも関わらず戦績が安定しているのは、ヴェローゾやパッツィーニというベテランの引き締めがあってこそだろう。ユーヴェ、ミラン、ラツィオ等を相手にしながらここ8試合負けなしと、後半戦に入ってからも勢いは増すばかりである。
【注目選手】
ファビオ・ボリーニ
冬にミランから加入したFW。豊富な運動力と仕掛けを武器にゴールに迫る。ミランでは便利屋的な役割が多かったが、ヴェローナでは攻撃的なポジションに専念出来るだろう。加入後5試合で2得点はファンの心を掴むのに十分な結果。
おわりに
今季優勝争いがもつれているのは、下位チームが例年以上に強いからだ。フィオレンティーナやトリノ、サンプドリアといった中堅クラブに加え、スクデットも期待された強豪ナポリまでもが2桁順位に沈み、昇格組や残留争いがメインだったチームがグッと力をつけている。当然楽に勝てる試合は無く、既にここまででユヴェントスは3敗。インテルとラツィオも計7試合勝ちきれない結果となっている。
欧州大会出場権をかけた争いでは、ローマ、アタランタの対抗馬として上記の4クラブ、イブラヒモビッチの帰還から復調の兆しを見せているミランが挙げられる。当然、闘犬率いるナポリもこのまま終わるつもりはないだろう。
圧倒的な強さを誇るビッグクラブも確かに魅力だが、ジャイアント・キリングには夢がある。
今季のセリエは面白い。
もしかしたら、これまでろくに知らなかったプロビンチャの一試合が、貴方の人生を変える出会いになるかもしれない。
文:kyazu (@serientina) 個人ブログ『アルノ川の畔から』