Lo Stadio Giapponese

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ファンが作るセリエA歴代選手名鑑〜アンドレア・ラノッキア〜

 皆さんは、 インテルを象徴するキャプテンといえば誰を思い浮かべるだろうか 。おそらくサネッティであろう。では皆さんは、 サネッティからキャプテンの座を受け継いだ選手が誰なのかご存知 だろうか。カンビアッソ?ミリート?それともイカルディ?


 次に皆さんは、 インテルに10年間在籍しサポーターから愛されたCBマテラッツ ィから背番号23を受け継いだ選手が誰なのかご存知だろうか。


 そして皆さんは、 長友がインテルに電撃移籍したのと同じ2011年冬に加入した、 ネスタ2世と呼ばれ将来を嘱望されたイケメンCBが誰なのかご存知だろうか。


 正解は全て、アンドレア・ラノッキアである。


 驚くべきことに、彼は2020年の今もインテルに在籍しており、 青黒のユニフォームを身に纏っている。



 サネッティが引退した翌シーズン(2014-15) からの主将がラノッキアになったと聞いたとき、 私は特別良いとも悪いとも思わなかった。ただ、 過渡期で若返りを図ろうとしているチームにとって、 この26歳の新主将がどのようなアクションを見せるのか楽しみではあった。

 

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 結論から言うと、 彼は主将としての役割を果たし切れたとはいえなかった。 代名詞的によく用いられた「エレガントな守備」は、 裏を返せば直感頼みの危なっかしいプレーとなった。 パスミスが多く、スピードで振り切られる場面も少なくなかった。 プレー面だけではなく、 当時無節操に大枚を叩いて繰り返された補強で構成された多国籍チ ームを一枚岩にするだけのキャプテンシーも不足していた。 ファンも彼を叩いた。成績が伴わず、 彼自身のパフォーマンスも頼りなかったから無理もなかった。 このシーズン、インテルは監督を途中解任し、 リーグは8位に沈んだ。


 もちろんこれらは彼だけの責任ではなかったが、 2015年夏にマンチーニ監督は主将をイカルディに交代すること を決めた。また新戦力のミランダとムリージョはすぐに安定したCBコンビを組み、不動のスタメンとなった。


 ラノッキアは一年でレギュラーの座と主将の座を失った。


 半年後の2016年1月、サンプドリアにレンタル移籍。 インテルでの居場所も失った。


 同じ冬、インテルがサンプドリアから獲得したエデルの背番号は23。私も目を疑ったが、彼は思い入れの強かったであろう背番号までも失った。 サネッティやマテラッツィの幻影に苦しんだ、とまでは思わなかったが、結果を見れば少々荷が重かったのだろうと思わざるを得なかった。


 1年後の冬、サンプドリアでのレンタルを終えてそのままプレミアリーグのハル・ シティにレンタル移籍。まずまずの活躍を見せていると知って嬉しかった。


 そして2017年夏、彼はインテルに帰ってきた。いつしかオーナーは変わり、 監督もマンチーニではなくなっていた。新監督にはスパレッティが就任した。


 インテルに復帰した当初のラノッキアは移籍を希望していたというし、私もそうなるものだと思っていた。 彼のインテルでの時間は残念ながら既に終わったと思っていたからだ。しかしスパレッティの就任を受けてラノッキアは残留を決めた。その根底にはスパレッティの元で学びたいという思いと、インテルへの変わらぬ愛情があったことは間違いないだろう。


 その時から今に至るまで、彼はずっと控えCBである。スタメンで試合に出たのは数えるほどしかない。現在のレギュラー陣とは大きな実力の差があるだろう。それでも彼がことあるごとに示してきたインテルへの愛情や愛着は 唯一無二のものだと思うから、私は彼が試合に出ると嬉しくなるし、全力で応援したくなる。ましてや今季はELやコッパ・イタリアで積極的に起用されており、コンテ監督からゲームキャプテンにも任命されているのだ。かつての主将がクラブでの居場所をなくしたのち帰ってきてキャプ テンマークを巻く———。そこには言葉にできない感情がある。

 

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 間違いなく私がラノッキアに抱く感情は6年前とは違う。私だけではなく多くのファンがそうだろうと思う。彼が愚直なまでに示してきたインテルへの愛情や、主将を降ろされても文句ひとつ言わず常にチームのために徹した彼の振る舞い一つ一つがそうさせたのは明らかである。6年前に浴びせたはずの批判が、こんな形で返ってくるとは思いもよらなかった。


 ネスタ2世は、ネスタになることはなかった。今はもう32歳である。年齢を重ねたからといって特段進化したとは思わない。しかしネスタになれなかったとしても、充実した幸福なキャリアがそこにはあるのではないかと思う。そしてそんな素晴らしいキャリアを送れる選手は一握りだけだろうと思う。


 確かにラノッキアは主将の座も背番号も失ったが、今ではたくさんのものを私たちにもたらしてくれているし、彼自身も得られていると信じている。2020年になった今も彼がインテルに在籍していることは驚くべきことであると書いたが、同時にこのことは必然だったかもしれないとも思っている。


 ちなみに今のラノッキアの背番号は、かつてネスタが長くつけた13番である。

 


【ファンが作るセリエA歴代選手名鑑】


File No. 6


Andrea Ranocchia


 
文:すないんてる(@interista0421)