Lo Stadio Giapponese

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ファンが作るセリエA歴代選手名鑑〜マレク・ハムシク〜

「セリエAで最もハーフスペースを使うのが上手い」

 

「私の現役時代と同じように彼には試合の重要な局面でゴールを決める決定力がある。彼の年齢でいけば、私よりもずっと優れているし、今後もさらに活躍できると確信しているよ

 

 フットボリスタでお馴染みで、現在はボローニャでミステル(ミハイロビッチ)の片腕として働いているレナート・バルディ氏と、現役時代はチェコ代表やラツィオ、ユベントスで活躍したパヴェル・ネドヴェド氏が彼のことを評した言葉である。


 僕が彼の存在を初めて意識したのはこの言葉を雑誌で見たのがきっかけだったと思う。セリエAの試合を見始めたのもこのころだった。当時はJクラブの試合ばかり見ていた僕にとってレベルのより高いカルチョの世界は魅力的なものだったし、16-17シーズンCLラウンド16のレアル・マドリ―戦、経済的に裕福ではない南イタリアのチームが、たとえ50分ほどであっても銀河系軍団を圧倒したという事実は、当時中学2年生の僕をナポリの虜にするには十分すぎるものだった。そして、ナポリの中心にはいつもハムシクがいた。

 

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 彼のプレースタイルを一言で表すのは非常に難しいが、特に攻撃面で違いを作り出す能力は群を抜いていた。両足から繰り出される強烈なミドルシュート、局面をガラリと変える大胆かつ精密なスルーパス、そして時には自らもタイミングよく裏抜けしてゴールを陥れてみせる。彼は出し手役も受け手役も高度にこなす稀有なプレーヤーだったのである。

 

 


 彼について語るときにもう1つ欠いてはならないのが、そのチーム愛だ。07-08シーズンにブレシアからナポリにやってきて以降、実に12年間近く在籍し、その間に公式戦518試合出場120得点を記録している。欧州5大リーグにおいて同一クラブ在籍のMFでは彼以外に達成者のいない100ゴール100アシストという記録もある。

 

 また、2017年12月23日のサンプドリア戦でナポリでの通算得点を116に伸ばし、ディエゴ・マラドーナを超えてクラブ歴代最多得点記録の保持者となった。この記録を最近ドリース・メルテンスが超えたのは記憶に新しいが、一時であれ、クラブの最多得点記録をMFが保持したことは彼の得点力の高さと在籍年数の長さを物語っている。

 

 


 そして、2018年11月6日のCL第4節パリ・サンジェルマン戦でナポリでの公式戦通算出場を512試合とし、この数字もクラブ史上最多となった。

 

 この記録達成に裏では、いくつものビッグクラブからの引き抜きの話があったのだから驚きだ。ミラノ勢をはじめボルシア・ドルトムント、レアル・マドリ―など国外のメガクラブまでが触手を伸ばした。代理人だったミーノ・ライオラは「マレクは世界トップのMFになれたのにタレントを無駄にしている」と言い、スロバキア代表のコザック監督もハムシクに移籍を薦めたことを明かしている。だが、ナポリでキャリアを終えようと本気で考えていたハムシクは耳を貸さなかった。チームが苦境にあっても批判の矢面に立ち、チームへの愛を前面に押し出したバンディエラはサポーターからの人気も絶大だったのだ。

 

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 皆さんもご存じの通り、現在彼は中国スーパーリーグの大連一方でプレーしている。昨年の冬の移籍は僕を落胆させたが、ファビアン・ルイスという自らの後継者になり得る存在の台頭があったからこその移籍なのではないかと今では考えている。長年チームを支えたベテランの移籍は、チームのことを第一に考える故、世代交代を推し進めるための彼なりの思いやりの表れだったのかもしれない。

 

 19-20シーズンのナポリは非常に苦しんでいるが、これも"ハムシク・ロス"の影響なのではないかと勝手に考えている。ナポリから第2、第3のハムシクが出てくることを願ってやまない。

 

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【ファンが作るセリエA歴代選手名鑑】

 

File No. 7

 

Marek Hamsik

 

 

文:Hiromu Konishi