Lo Stadio Giapponese

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ファンが作るセリエA歴代選手名鑑〜ガブリエル・バティストゥータ〜

 宣誓

 

 私はファイナンシャル・フェア・プレイ(Financial Fair Play)精神に則り、嘘偽りなく記することをここに宣言致します。

 

 よろしい、では問おう。

 

 世界一のサッカー選手は誰か?

 

 はい、ガブリエル・オマール・バティストゥータ(Gabriel Omar Batistuta)さんです。

 

 クリスティアーノ・ロナウド(Cristiano Ronaldo)さんではなく?

 

 はい

 

 デイヴィッド・ベッカム(David Beckham)さんでもなく?

 

 はい

 

 アレッサンドロ・デル・ピエロ(Alessandro Del Piero)さんでもなく?

 

 はい

 

 イルハン・マンスズ(İlhan Mansız)さんでもなく?

 

 はい

 

 ミゲウ・ヴェローゾ(Miguel Veloso)さんでもない?

 

 はい

 

 

 こやつ、ひょっとして……。 ここまでくるとそう思った方もいるかと思います。何れも男前で名を馳せた方々だから。

 

 そうです。私は今かんばせについて答えています。つまり私は

 

 かんばせ世界一のサッカー選手はバティストゥータさんです。

 

 と、こう言っているのです。

 

 サッカー選手のプレイではなくかんばせを語る。

 

 私は今タブーを犯しているのかもしれません。 スタジアムのメイン・スタンドに座るような上品なサッカー・ ファンの方々はサッカーの本質はプレイにある!と憤り、 ゴール裏に陣取るような熱心なサッカー・ ファンの方々はマイナーな選手ならいざ知らず、バティストゥータさんのようなメジャーな選手でプレイを語らないとは恥を知れ!と叫び、コインや発炎筒を投げつけたい気持ちにかられているのではないか と危惧しています。いや、そうしたいに違いないのです。

 

 私だって本当はバティストゥータさんのプレイについて語りたいもの。あの試合でのあの場面やこの試合のあの振る舞いについて語りたい もの。しかしバティストゥータさんのかんばせについて語る止むに止まれぬ事情が私にはあるのです。

 

 

 私が彼を初めて認識したのは2002年の日韓ワールド・ カップ開催中にでた、ある新聞記事でした。 そこにはアルゼンチンが決勝トーナメント進出を逃がしたことを伝 える見出しと共に一枚の写真が添えられていました。 その写真には俯き、 憂いを帯びたバティストゥータさんのかんばせが写っていました。

 

 その写真の神々しさと言ったら、もう! 私には彼のかんばせがイエス・キリスト様そっくりに見えました。 私はイエス・キリスト様のかんばせを見たことはありません、けれどその時の私はなぜだかそう感じたのです。

 

 私は恋に落ちました。そこからはあっという間でした。気付いた時には彼を追いかけて海外サッカー、 いやカルチョの扉を開いていました。 TVの向こう側には私の知らない世界、 発炎筒が炊かれ煙が充満するスタジアム、ピッチ・ サイドで煙草を吹かしながら戦況を見つめる監督、 そしてなりよりバティストゥータさんのいるカルチョの世界が待っていました。

 

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 私はバティストゥータさんに夢中でした。けれど、問題が発生します。当時バティストゥータさんはASローマというクラブに在籍していたのだけれど、彼があまり見られなかったのです。何せ昔のことなので記憶があいまいなのだけれど、途中出場が多かったのだと思います。そして私がカルチョを見はじめた年の冬に彼はASローマを後に( インテルへレンタル)しました。更に次の年の夏、彼はカタールへと飛び立ち、私の視界から完全に消え失せてしまったのです。

 

 当時の私はカルチョのルールもろくにしらず、バティストゥータさんのかんばせが映るだけであぁ、 なんて格好良いのだろう、最高!と大満足していたので彼のプレイや振る舞い等ほとんど気に留めていませんでした。 そして儚い蜉蝣のように瞬く間にいなくなってしまった彼。気付けば私一人だけがカルチョの世界に取り残されていました。私は今も彼のかんばせの思い出だけを胸に抱き、 生きながらえています。この世界の片隅で、 彼へとつながる扉となってくれたASローマと共に。

 

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 これが私がバティストゥータさんのかんばせについて語る理由です 。私は彼のプレイや振る舞いを語れないのです。知らないから。 私が彼のプレイを語れば、嘘をつくことになってしまいます。 嘘偽りなく記すると宣言した以上それはできません。けれど私にも語れることはまだ四つ残されています。

 

 

 一つ、バティストゥータさんは凄い!

 

 私にとって世界一格好良いかんばせをもつ儚い蜉蝣であるバティストゥータさんは実は偉大なるストライカーでありました。 イタリア語版Wikipediaによれば2005年3月13日に 現役引退を発表した彼はクラブでは通算553試合に出場300 得点( ASローマ公式サイトによればセリエA通算318試合に出場し184得点)、アルゼンチン代表では77試合に出場55得点( ASローマ公式サイトによれば78試合56得点)したそうです。えっ?数字だけ並べてもいまいち凄さがわからないって? 安心してください。私も分かりません。そんな私達?にも彼の凄さが分かるものがあります。それは彼の愛称です。彼の愛称の一つに

 

イル・レ・レオーネ(Il Re Leone)

 

というものがあります。イタリア語で獅子王、つまりライオン・ キングを意味します。これは彼の偉大さ、威厳、そして彼が森林の王(ライオン) のように思わせたブロンドのたてがみを持っていたことに由来し、ディズニーのアニメーション映画『ライオン・キング』 を引用した愛称です。ライオンですよ。ラ・イ・オ・ン。 あの百獣の王として有名な。貴方はライオンと戦って勝てるでしょうか?勝てませんよね? ひょっとしたら百獣の王を目指している芸能人の武井壮さんなら勝てるかもしれませんね。けれどバティストゥータさんはただのライオンではないのです。 彼はライオン・キング、百獣の王の王なのです。これは武井壮さんでも勝てない。 普通のライオンでさえ強いのにライオンの王とあっては誰一人として勝てない。勝てるはずがない。彼は最強なのです。凄い、凄過ぎる。最高!

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二つ、バティストゥータさんはエズルタンツァ( Esultanza)も凄い!

 

ライオン・ キングのバティストゥータさんはキングというだけあってそんじゃ そこらのライオンとはわけが違います。 彼はなんと機銃を隠し持っています。 しかもそれを容赦なく掃射します。ライオンのくせにです。 彼が機銃を取り出し掃射する瞬間、それがエズルタンツァです。 イタリア語で歓喜や大喜びを意味するこの言葉。 カルチョにおいてはゴール・ セレブレーションの意味で使われます。

 

  お分かりいただけたでしょうか? 彼のエズルタンツァの機銃掃射の格好良さといったら、もうっ。世界一格好良いですね。完璧。文句のつけようがない。 私も撃たれたい!私はこれらの動画を100回は見られます! と言ったら嘘になるので言わないけれど15回は見られるのです! 彼の全てが素晴らしい!愛おしい!

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 三つ、バティストゥータさんは凄過ぎて天使になる!

 

 バティストゥータさんは凄過ぎてアルゼンチンの人々にとって天使となりました。前述のようにアルゼンチン代表で77試合に出場し55得点( ASローマ公式サイトによれば78試合56得点) した彼は自身の得点で数々のアルゼンチン代表の窮地を救いエル・ アンヘル・ガブリエル(El Ángel Gabriel)、 スペイン語で天使ガブリエルという意味の愛称が付いたのです。 ガブリエル・ バティストゥータさんは生きながらにして天使になってしまいました。普通は天国に行ってから成るものなのに。尊い。分かっています。分かっていますよ。 貴方はラテン系の人々はすぐ大げさに言うからエル・アンヘル・ ガブリエルも大げさに言っただけで本心ではないのではないかと思っていますね?そんなことを思ってはダメ!バティストゥータさんを舐めてはダメ!そんな貴方に決しては大げさではない証拠をお見せします。

 

 "Grazie a Dio Batistuta è argentino(神よありがとう、 バティストゥータがアルゼンチン人で)"

 

 これはサッカーの神様、つまりディエゴ・マラドーナ(Diego Maradona)さんが述べた言葉です。 マラドーナさんはバティストゥータさんが「サッカーをする決定的な後押しとなったのは友人から貰ったマラド ーナさんのポスターだった。」と語るほどの偉大な方であり、 思ったことをすぐ口に出してしまうお方です(私的見解です。 マラドーナさんファンの皆様すみません)。 決してお世辞を言えるようなお方ではありません(私的見解です。 重ね重ねすみません)。 したがって彼の口からでた言葉は本心なのです。 あの世界で一番偉いのは私だと思っていそうなマラドーナさんが神に感謝する、バティストゥータさんがアルゼンチンの人々にとって天使であるこ れ以上の証拠があるでしょうか?ないですね。バティストゥータさんはサッカーの神様に認められた天使。やはり尊い。

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 四つ、バティストゥータさん、遂に得点になる!

 

 ライオン・ キングであり天使であるバティストゥータさんはとどまる所を知り ません。まだ愛称があるのです。それは

 

 バティゴル(Batigol)

 

です。 これは彼があまりに点を獲るからという理由でバティストゥータさんのバティとイタリア語で得点を意味するゴルをくっ付けてしまった愛称です。

 1991年の夏にアルゼンチンから花の都フィレンツェにあるACFフィオレンティーナというクラブにやってきたバティストゥータ さんは、シーズン前半を17試合3得点( しかも全てACFフィオレンティーナが先行している状態での得点 )という成績で終え、 イタリアに適応するのに時間を要したそうなのだけれど、1992年1月26日のACFフィオレンティーナ対ユヴェントゥ スFC戦(2-0でACFフィオレンティーナが勝利) で開始7分にカロッビ(Carobbi) さんがボールをエリア内へ送り、 これをバティストゥータさんがヘディングでネットに沈めるとこの瞬間から彼はバティゴルと呼ばれるようになったそうです。 そして次の2試合で5得点、 シーズン後半戦全体で10得点と得点を重ねるように。 結局バティストゥータさんはASローマに移籍するまでの9年間 公式戦332試合に出場207得点(内セリエA152得点) を記録。 セリエAにおけるACFフィオレンティーナの歴代最多得点記録を 樹立してしまったそうです。 歴代最多得点記録を樹立を樹立されてはバティゴルの愛称が付くのも致し方なし。タイム・ マシンに乗って1991年に飛びバティゴルのゴールを全て見たい !207回ゴールと叫びたい! でもそうしたらたぶん私はASローマ・ ファンではなくてACFフィオレンティーナ・ ファンになっちゃう!どうしましょう!

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 あーあ、もう語れることがなくなってしまいました。これが拳銃の弾なら私の弾はたったの4発。バティストゥータさんの機銃掃射には遠く及ばない。真似もできない!寂しい! もっとバティストゥータさんに近づきたい!

 

 

 さて皆さん、私は宣言したとおりバティストゥータさんについて思っていること、知っていることを嘘偽りなく記しました。納得していただけたでしょうか?私はまったく納得していません。バティストゥータさんの魅力はこんなものではないはずです。彼にはもっと語られるべき思い、語られるべきプレイ、語られるべき試合、語られるべきエピソードがあるはずです。 これを読んで

 

なんだ、これは!まったくなっていない!こうなれば

 

私が、僕が、あたいが、俺が、あたくしが、わしがバティストゥータさんについて書いてやる!

 

そう決意してくれる人がたくさん現われてくれることを心から願っています。

 

【ファンが作るセリエA歴代選手名鑑】

 

File No. 8

 

Gabriel Batistuta

 

 

文:AS ROMA電子報告(@asroma_dempo)