私は小学生の頃、地元のサッカークラブに所属しており、 友達との話題やゲームもサッカー関係が多かった。
当時のサッカー界は、代表ではブラジルとイタリア、フランス、 チームではユベントス、インテル、ミラン、レアル・マドリー、 バルセロナなどが小学生の大半を魅了していたと記憶している。これは、 海外サッカーを見れる環境が多くなかった事が人気の集中を加速させていた様にも思う。
その為、 友達と集まってウイニングイレブンをやる際などはチームが被る事が当たり前だった。当時の私はそれが嫌であり、 友達の選ぶメガクラブに勝てる戦力がありつつ、 あまり選ばれないチームを探した。
そこで選んだのがASローマである。
ヒデが在籍してくれたお陰で、 日本でも情報が比較的入手しやすく、 トッティやバティ等の華やかな選手もいた事が背中を押した。そして、当時最高峰と言われたセリエAの優勝候補の一角であり、 イタリアの中で攻撃力の意識を強くもち、 カテナチオに挑む姿に魅了された。また、私の周りにはロマニスタが居なかった。
自分語りがとても長くなってしまったが、こうしてロマニスタとなった私が当時1番憧れていた選手を今回振り返り、紹介させて頂こうと思う。
"ヴァンサン・カンデラ"である。
利き足が右であるのに対し、ポジションはLSB、LWB、 LSHと左サイドのDF、MFである事からも分かるように、 彼の強みは
・豊富な運動量
・巧みな技術を活かした美しいカットイン
であった。
また、現役16年間（381試合）で20ゴール（ 代表では6年間、40試合で2ゴール） と決して多いとはいえないが、 広い視野から生み出されるスナイピングシュートも魅力の1つであった。
出身国であるフランスでトゥールーズのユースとしてキャリアを始めた彼は先述した強みを活かし、 ギャンガンそしてローマと順調にステップアップを果たした。カフーと共に作り上げたサイドアタックは史上最強クラスであり、 ローマ悲願のスクデット獲得の立役者である。
代表では、リザラズらに惜しくも阻まれ続け、 出場機会は少なかったがレブルーには欠かせない存在としてチームを支え、W杯優勝に貢献した。
歳を重ね2005年にローマを退団した後はボルトン、 ウディネーゼ、シエーナ、 メッシーナと渡り2007年に引退した。 因みに引退試合はローマで2009年に行った。
人物としては、 現役時も引退後もローマを中心にチームを思いやる発言が多く、 イタリアにライバル意識を強く持つフランス人と両者の間を取り持つ事ができる人柄である。トッティと非常に仲が良く、ボールで会話が出来ると評された。この為余談だが、 トッティの愛すべきおバカエピソードにはカンデラがよく登場する 。
因みにトッティがピッチ外でもよく時間を共にしたと名を挙げたの は、カンデラ、ディフランチェスコ、カフー、ザネッティ、 ゼビナらDF、MF陣である。
あまり過激な発言もせず（ せいぜいコンテがローマのベンチに座ってる姿は見たくないと語った程度）特段目立つタイプでは無いが、 近年のローマレジェンドの1人である事は間違いない。
近年のセリエA人気は冷え気味であり、 ローマでもデロマニッザッツィオーネ（脱ローマ思想） が提唱されるなど寂しさが蔓延している。そんな今こそ、 彼の様な存在にチームの核を担ってほしいと私は思う。
【ファンが作るセリエA歴代選手名鑑】
File No. 9
Vincent Candela
文：ろーま（@roma_pokesaka）
