Lo Stadio Giapponese

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EURO 2012 Spain VS Italy

 私にとって、忘れられない試合というのはいくつかある。しかし「 初めて」忘れられない試合になったものは一つしかない( 当たり前だ)。そして忘れられない試合の中で一つ選ぶなら、 という問いにもこの試合を選ぶ。原点にして頂点、とまで言うと大袈裟だろうが、今回私が紹介させて頂くのは、そういう試合である。


 EURO 2012グループCの初戦、スペインvsイタリアである。


 この試合まで私は、W杯を除き海外サッカーをライブで見たことがほとんど無かった。理由はいくつかある。そもそも観る環境が無かった。携帯はガラケーで自分のPCも無く、地上波のみの環境では海外サッカーを観る術が無かったのである。また、深夜〜明け方に起きて観るという習慣も無かった。本屋で読む雑誌や時折見るネットのニュース、ハイライト動画で満足していたというのもあった。学生生活も忙しかったし.インテルがきっかけで色々と漁りはしていたものの私の中でサッカーはそこまで大きな位置を占めていなかったのだ。


 そんな中、この試合は地上波でライブ放送があった。 観ようと思ったのも「物は試しだ」ぐらいの軽い気持ちだった。 深夜の3時半とかに起き出すことも今まではそうそう無かったから その非日常感も楽しさをプラスしていた。


* * *


 下馬評ではスペイン代表の圧倒的有利だった。EURO2008、W杯2010とメジャートーナメントを目下二連覇中で、この大会も優勝候補筆頭だったから無理はない。かたやイタリア代表はW杯2010でグループリーグ最下位。合宿の直前には違法賭博スキャンダル(いわゆる八百長) 捜査の本格化で代表選手にも関与が疑われた。 大会前の期待値も高くはなかった。


 そんな両チームは先発メンバーから驚きを提供してきた。スペインは4-3-3だったが、前線の3人は左からイニエスタ、セスク、D.シルバ。本職のWGやCFがおず、最終ライン以外の6人は、先の3人に加えX.アロンソ、ブスケツ、シャビという稀代のパサーで占められた。対するイタリアは過去2年間で試したことのなかったという3バックを用意。さらにバルツァーリを控えに回し、3CBの中央にはデ・ロッシを起用したのである。リベロ的な役割が想定されていたのであろう。


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 と、いうようなことはあまり気にせずに当時の私は試合を観た。意外だと思ったのはセスクのCF起用とデ・ロッシのCB起用ぐらいである。 それ以上に私は試合のテンポや展開に圧倒された。一言でいうと、90分間ドキドキしっぱなしだったのである。これは私の知っているサッカーではなかった。「それまでの私の知るサッカーの試合」によれば、「 中盤でパスを回す時間」は退屈な時間帯であった。ところがこの試合はどういうわけか、ボールがセンターサークルの近くを転がっている時でも一瞬たりと も目が離せないのだ。いつどの瞬間を切り取っても観ていて面白い。ピルロとデ・ロッシが絶えず前線へのパスを狙い、マッジョとジャッケリーニがサイドを上下に駆ける。カッサーノは俊敏に動き回り、セルヒオ・ラモスとピケがそれに対処。 バロテッリは虎視眈々と相手の隙を窺い、イニエスタやセスクは相手のPA内ですら細かくパスを繋ぎ、決定機を作ろうとする。前半終了の笛がなった時、私は大きく息を吐いたのを今も覚えている。


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 先制したのはイタリアだった。途中交代で入ったディ・ナターレがピルロのスルーパスに完璧な反応を見せ、シャープな一撃でカシージャスの脇を抜いたのだ。このゴールも、直後のゴールセレブレーションも、一連のワンシーンとしてコマ送りのように鮮明に覚えている。 しかしスペインもさすがは王者といったところで、 その4分後にパス交換からセスクが抜け出して決めて同点に追いつく。その後は途中からスペインが本職のWGやCFを投入して流れが良 くなったが、イタリアは集中力を切らすことなく対応し続けた。そのまま引き分けで試合は終わった。


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 試合後のインタビューでイタリア代表のプランデッリ監督(当時) は、3バックで臨むことを決めたのは8日前だったこと、そしてそう閃いた理由を「流れを変える必要があった」 と説明したらしい。そんなことは知る由もなかったし、なんなら結果のスコアも重要ではなかった。その時の私は先ほど終わった試合のことで頭がいっぱいだった。さっきも書いた通り、 ライブで観たサッカーの試合で90分間息をつく間もないほど面白かったことが(記憶にある限り)初めてだったからだ。とりわけ、あのスペイン相手にパスサッカーでがっぷり四つに渡りあったイタリア代表に対する印象は鮮烈なものがあった。 交代で先制点を決めたディ・ナターレやアンカーとしてのデ・ ロッシ、「新旧悪童コンビ」 として大会を彩ったバロテッリとカッサーノの2トップ、 あるいは中盤の底でくるくると相手をいなすピルロといった面々を 限りなく格好いいと思った。もっとこのチームの試合を観たいと思った。


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 この大会でイタリア代表は決勝まで上り詰める。 相手は再びスペインだった。その結果はさておき、そこに至るまでの試合はどれも私にとっては忘れられない試合である。芸術的なターンからバロテッリのゴールをお膳立てしたカッサーノのクロスも、世界中を驚嘆させたピルロのクッキアイオも、 そしてドイツの野望を打ち砕いたモントリーボのロングパスも、ついこの前のことのように覚えている。しかしそれらも、この試合を観ていなければ忘れられない試合にはならなかった。この試合を観ていなければ、 海外サッカーをライブで観る面白さに気付くのはいつになっただろうか。この試合によって、私のサッカーを観ることに対する「 流れが変わった」のである。


 私にとってEURO 2012グループCの初戦、スペインvsイタリアは、そういう試合である。


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 観た試合に関する自分語りになってしまった感がありますが、最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

【忘れられないあの試合】

EURO 2012

Spain VS Italy

1-1

 

すないんてる(@interista0421)