Lo Stadio Giapponese

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ファンが作るセリエA歴代選手名鑑~ティエムエ・バカヨコ~

 セリエAファンの皆さんは、最も印象的な選手はと聞かれたら誰の名前をあげますか?マルディーニやサネッティ、トッティなどのバンディエラだったり、バロテッリやカッサーノ、イブラヒモビッチなどの悪童だったり。十人十色の魅力的な選手の名前が聞こえることでしょう。
 この記事では、私の心を奪ったとある選手の1年間について紹介していきたいと思います。

(注その1:こういった文章を書くのが初めてなので、拙い文章となります)
(注その2:最初に記事を書いてみようと決めてから書き終わるまでに2週間かかっているので、内容や書き方がブレブレの可能性があります)

 

・出会い

 2018年の夏のメルカートも終盤に差し掛かり始めていた8月の中頃、ある1人の男がミラノの街へとやって来た。今日の主人公、ティエムエ・バカヨコである。

 16/17シーズンにリーグ1優勝、CLベスト4進出を果たし飛ぶ鳥を落とす勢いだったモナコの立役者となりながらも、期待の中移籍したチェルシーではプレミアの水に合わず。鳴かず飛ばずだった彼に、懐疑的な目を向ける者も少なくなかった。
 プリマ生え抜きのロカテッリがサッスオーロへと去り、W杯で劣化が見られ始めていたビリアの負担を軽減するために来た彼の買い取り額は3500万€。前中華体制の無謀な補強により収支がトンデモナイコトになってしまっていたミランが1人の選手に費やすのには、少々お高めの額である。
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(入団会見で同じく新加入のラクサールからサプライズで誕生日ケーキを渡されているバカヨコ。お誕生日は8月17日なので覚えておきましょう。)

 

・転機

 それから1ヶ月ちょっとが経ち、リーグ戦を数試合消化した頃には、そんな彼に期待する人はほとんどいなくなっていた。ジェノバで起きた橋の崩落事故に伴い開幕節が延期、実質的な開幕節となったナポリ戦ではリードして途中出場するも、不安定なプレーに終始しチームは逆転負け。その後も低調なパフォーマンスが続いた。冬にチェルシーに戻るのではないかという噂も流れ始め、頑なに途中出場での起用を続けるガットゥーゾ監督の采配が疑問視され始めていた。

 しかし、10月の末になると、状況が一変。それまでスタメンとして出場し続けていたボナベントゥーラとビリアがそれぞれ9ヶ月と4ヶ月の大怪我。中盤の層が厚くないミランは、バカヨコのスタメン起用を余儀なくされる事になる。

「もう終わりだ。」

 多くのミラニスタが頭を抱えていた。

 そんな中迎えたスタメン1試合目のジェノア戦。2ボランチの一角で起用されたバカヨコは、持ち前のフィジカルを生かしたプレーでまずまずを見せるも現地誌の評価はチーム最下位。ロマニョーリのAT弾で劇的勝利を納めたから良かったものの、ファンからは否定的な声が多く聞こえていた。

 次節のウディネーゼ戦、開幕から10節まで全てのリーグ戦で失点を記録し「義務失点」と揶揄されていたミランは、ロマニョーリの2試合連続AT弾により1-0で勝利した。この試合で中盤を制圧し、シーズン初のクリーンシートに大きく貢献したのが他ならぬバカヨコだった。
 前節同様にケシエと2ボランチを組んだバカヨコは、相手からボールを刈り取り、フィジカルを生かしたドリブルでラインを押し上げるというシンプルな役割を全うし、最後まで勝敗が分からないタフなゲームでチームを支えた。バカヨコを諦めなかったガットゥーゾ監督によるビデオを見ながらのマンツーマンでの復習や、バカヨコの特性を生かしたシンプルな要求により、バカヨコはここから覚醒を迎えるのであった。

(このテンポだと終わらなそうなのでここからはちょっとあっさりしていきます)

 

 主将の2試合連続劇的ゴールで勢いに乗ると思われたミランだが、ここからどんどんと調子を落としていくことになる。

 イグアインがユヴェントス戦で退場したのをキッカケに、プレー面や精神面でも精彩を欠き8試合連続無得点。チームとしては15~18節にかけて20数年ぶりとなる4試合連続無得点という不名誉な記録を打ち立ててしまう。
(ちなみに、先述の連続失点は17/18シーズン終わりから数えると70数年ぶりの記録)

 チームは不調に陥るもバカヨコの覚醒は止まらず、13~20節で7試合に出場し、4度のMVPを獲得。文字通りピッチの中央を我が物とし、開幕直後の体たらくが嘘であったかのようにボール奪取、空中戦、ドリブルの全ての面で出色のプレーを続け、買取OPの行使は必至だと囁かれるようになった。
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(短期間で4度のファン投票MVPを獲得するバカヨコ)

 

・順風満帆な年明け

 年内最後の試合をイグアインの決勝ゴールでなんとか勝利し、5試合ぶりの白星を手にしたミランは、進退が揺れていたガットゥーゾ監督を続投することを決意。また、久々にゴールを決めたものの色々と怪しくなっていたイグアインのレンタルを打ち切り。ジェノアから前半戦のセリエA注目株だったFWピョンテクを、フラメンゴから期待のブラジル人若手MFパケタをそれぞれ移籍金3500万€で獲得。冬に2人の新戦力を補強したミランは、ピョンテクがスタメンデビュー戦でドッピエッタを記録したコッパ・イタリアナポリ戦での勝利を皮切りに連勝街道へと突入。チームの核となったバカヨコもミランへの愛を示し,
「初ゴールを決める時はみんなを驚かせられるよ」

「来シーズンはイタリア語でインタビューに答えるよ」

などと露骨に残留への意思を匂わせ始める。

 3月17日のミラノダービーを前にしてリーグ戦5連勝、欧州5大リーグトップタイの年明け12試合4失点、CL権を最後に獲得した12/13シーズン終了時以来の約6年ぶりの3位に躍り出し、ミラニスタは久々のCL権獲得、そしてバカヨコの買取に向け大きく期待を膨らませていた。

(そんな中、筆者は初の渡伊を決意。現地のミラノストアでバカヨコのユニフォームを買い、憧れのサンシーロ、ホームゴール裏へとデルビーの応援に駆けつけた。)

 

 そして迎えたミランホームのミラノダービー。試合前からバカヨコのチャントがスタジアム内に響き渡る。2点を先制されたミランは、後半10分。敵陣中央やや右で得たFKをチャルハノールが蹴ると、ヘディングで合わせたのはバカヨコ。ホームスタンドに向かって何度も胸のエンブレムを叩きながらすぐさま自陣へと戻っていく。シーズン途中からチームを後方から支えていた14番の後ろからの難しい角度からの魂のゴールに、リードを奪われ沈黙しかけていたホームサポーターは再び声を取り戻した。

 このゴールで反撃の狼煙を上げた、、かのように見えたミランだったが、10分後にPKから再び2点差にリードを広げられる。すぐさまCKからの流れで1点差に追いつくもそのまま試合終了。この試合での敗戦が結果的にミランの命運を大きく狂わせてしまうことになる。


(試合のハイライトです。良かったら是非。)


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(ダービーでゴールを決めたバカヨコのセレブレーションです。目の前で見ることが出来て本当に幸せでした。)

 

・狂い出す歯車

 デルビーに敗れたミランは、その後サンプドリア、ウディネーゼ、ユベントス相手に1分2敗と大きく失速。当時事実上のCL決定戦とも言われていたラツィオ戦は1-0で勝利するも、試合後にバカヨコとケシエが試合前からSNSを通して煽りあっていたアチェルビのユニフォームをスタンドに向けて掲げ炎上。2人への人種差別行為がエスカレートしてしまう。

 ラツィオ戦にこそ勝ったミランだったがその後も調子は上がらずミラノダービー以降7試合で勝ち点5。後半戦絶好調だったアタランタ、シーズンを通し小競り合いを繰り返していたローマに追い抜かると、リーグ戦残り4試合を残して後がない状況に陥る。

 35節のボローニャ戦に勝利したミランだが、そこで事件が発生する。バカヨコが度重なる遅刻への懲罰としてスタメンから外されると、交代として呼ばれる際にガットゥーゾと口論。監督に向かって「fu○k ○ff」と発言するところがカメラに収められ、ミランとバカヨコにに更なる暗雲が立ち込められる。
 それでも表面上は和解をし、スタメンに戻ると2連勝を収め場面はついに最終節。

 残りのCL権2枠を争うのはそれぞれ勝ち点66,66,65のインテル、アタランタ、ミラン。
ミランがCL権を獲得する最も現実的な条件は条件は『インテル、アタランタのどちらかが勝ち点を落とし、かつミランが勝利する』というもの。3試合が同時間開催で試合中に目まぐるしい順位が変動した近年稀に見る盛り上がりを見せた最終節だったが、結果的には3チームとも勝ち点を拾いインテルとアタランタがCL権を獲得。試合終了15分前まで4位についていたミランだったが、他会場の結果に恵まれず選手、サポーター共に涙を飲んだ。
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(当時Twitterで保存した最終節の試合中の順位の変動を表したグラフです。本当に惜しかった、、)

 

・別れとその後

 CL権を逃した事や、バカヨコを覚醒させ重用していたガットゥーゾの辞任(事実上解任)、後任のジャンパオロがバカヨコとは合わないパスサッカー系という事もありバカヨコの買取OP行使は絶望的に。一縷の希望を信じていたミラニスタも多かったが、6月末のローン終了を前にバカヨコの「チェルシーに戻るよ」という言葉とともに正式にバカヨコミランでの旅は終わった。

 それから8ヶ月程が経ち、1度の監督交代を経て、前年度から比べ順位を下げているミラン。バカヨコの復帰を望む声も少なくない。

 一方チェルシーに戻ったもののランパード新監督の構想外になったバカヨコは、1年間の買取OP付きローンで2年ぶりにモナコに復帰。そんな彼だが、モナコ在学中にも関わらず、Instagramのストーリーでミラン選手の誕生日を祝ったり、Twitterでミラン公式アカウントのツイートにリプライを送ったり、終いにはスタジアム内でミランの選手と歩いているところを目撃されたり(その後スタンドで試合を観戦)、ミランへの愛を全く隠すことなく押し出してきている。

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(べナセル(左)、ケシエ(右)と歩くバカヨコ(奧))

 

 ミランは現在フロントの内紛等で来季以降のプランが定まっておらず、今後どのような補強が行われるかは全く不透明である。果たして、バカヨコがまたミランでの旅を再開する日は来るのだろうか。部屋に架かっている14番のユニフォームに、私は今日も問いかける。

 

 ここまで読んでくださってありがとうございました。色々と大変な時期ですが、これからもみんなでセリエAを盛り上げていきましょう!
 それでは。

 

【ファンが作るセリエA歴代選手名鑑】

 

File No. 22

 

Tiemoue Bakayoko

 

 

しゅん(@milanista_shun)