🗣「ユーヴェに残りたいけど、どうでもいい存在なら他を当たる。この2シーズンはベンチで腐っていた。3度目なんかたくさん。ユーヴェを後悔させてやる。」
フォルミカ・アトミカ(原子アリ)の愛称で知られるセバスティアン・ジョヴィンコが08-09シーズン終了後に発した言葉である。
05-06シーズンに発覚したカルチョ・ポリによりユヴェントスはセリエBでの戦いを余儀なくされた。ジョヴィンコはクラブ史上最大の苦境の時期にプロデビューを果たす。昨夏に現役引退を発表したプリンチピーノ(王子)ことクラウディオ・マルキージオと共に。
翌年はその2人でエンポリへ武者修行。健闘虚しくB降格の憂い目に合うが、活躍が認められユヴェントスへの復帰を勝ち取った。
その後は、マルキージオがチームの中核として活躍する反面、ジョヴィンコは度重なる怪我も相成り定位置を掴むに至らず、共同保有権を持つパルマに放出された。
『ユーヴェを後悔させてやる。』
この発言通り、ジョヴィンコはパルマで15得点を記録。再びユヴェントスが保有権を買い取った。
ウイニングイレブンや雑誌で情報を集めていただけでなく、僕が“プロサッカークラブとして“ユヴェントスの応援を始める前年の話である。
160cmの小さな身体から奏でられるドリブルと正確無比なフリーキック。そして、苦労とたゆまない努力の積み重ねのストーリーが少年時代の私を惹きつけたのかもしれない。ユヴェントスを退団して5年が経つ今でも彼は私のヒーローだ。
ユヴェントス退団後は、MLSのトロントFCでリーグ制覇とMVPを獲得。
そして昨夏に移籍したアル・ヒラルではアジア王者に輝いた。
ロベルト・バッジオやデル・ピエロのような華のあるキャリアではないのかもしれない。きっと彼が当初思い描いていたキャリアとはかけ離れていたのだろう。同期のマルキージオを自分と比較して思い悩むこともあっただろう。
だからこそ。
だからこそ私は彼に、彼が歩んできたストーリーに惚れたのだ。 欧州第一線ではなく、北米とアジアの地で自らの居場所を見つけた彼の生き様に。
順風満帆な選手は誰にでも愛される。 マルキージオは多くのユヴェンティーノに愛され、そして昨夏に一足早くスパイクを脱いだ。 セバスティアン・ジョヴィンコは何人の人間に愛されているのだろう。 私のような“捻くれ者”は何人いるのだろう。
彼のキャリアはまだ続く。
デル・ピエロをも超える才能とまで言われた彼のストーリーの続きを目に焼き付けようじゃないか。
“貴方”が再び白黒のシャツに袖を通すことを私は今でも夢に見ています。
【ファンが作るセリエA歴代選手名鑑】
File No. 2
Sebastian Giovinco
文:あべんとす(@abes0712)